トピックス Topics

新人がすぐやめていく…運送会社の離職率を劇的に改善した「360度評価」の裏側

2025.10.25

Uncategorized

「新人がすぐに辞めてしまう…」 「社内の雰囲気がギスギスしていて、教える文化が根付かない」 「売上は大事だけど、それだけが評価基準でいいのだろうか?」

多くの企業、特にドライバーのように個人で動くことが多い運送業界では、人間関係評価制度が大きな課題となりがちです。

今回は、ある運送会社が離職率の改善と職場環境の向上を目指して導入した「360度評価制度」について、その導入のきっかけから運用の裏側、そして驚くべき効果までを詳しくご紹介します。

「上司だけ」の評価から「全員で」の評価へ

そもそも「360度評価」とは、従来の上司が部下を評価する一方的なものではなく、同僚や後輩、部下など、立場に関係なく全方向から多角的に評価を行う制度です。

これにより、上司からは見えにくい仕事への取り組み姿勢や、チーム内でのコミュニケーション、人間関係といった側面も評価の対象となります。


導入のきっかけは「北斗の拳」のような職場環境だった!?

この会社が360度評価を導入する以前は、個人の売上が評価のほぼ全てを占める「売上至上主義」でした。その結果、社内は「俺が俺が」という雰囲気になり、個人プレーが横行。新人が先輩に質問しづらかったり、忙しい時に邪険に扱われたりすることも少なくなかったそうです。

昔は本当に個人プレーの集まりでしたね。自分の運行が最優先で、他の人が困っていても手伝う余裕がない。新人が入ってきても「見て覚えろ」「失敗して覚えろ」という感じで、教える文化なんてありませんでした。(ベテランドライバー談)

このままでは、せっかくコストをかけて採用した新人が定着せず、ベテランが持つクレーン操作などの貴重な技術も継承されない。何より、社員が満足して働ける環境でなければ、お客様への良いサービス提供にも繋がらない。

そんな危機感から、**「社員満足度の高い職場作り」**を目指し、360度評価の導入プロジェクトがスタートしました。


評価項目は「どんな人と働きたいか」から生まれた

制度を作るにあたり、まず最初に行ったのは「私たちは、どんな人と一緒に働きたいか?」を社員みんなで考えることでした。

そこから生まれた、ユニークで具体的な評価項目の一部をご紹介します。

  • 手伝ってくれた相手に対して、”笑顔で”感謝の言葉を伝えているか?
  • 誰にでも「はい」「ありがとう」「ごめんなさい」を素直に言えているか?
  • 全員に対して敬意を表し、「さん付け」で呼んでいるか?
  • いつも笑顔で、明るく爽やかに挨拶ができているか?

当たり前のことのように思えますが、これらをあえて評価項目にすることで、「ただ仕事ができる」だけでなく、「人として一緒に働きたいか」という視点を大切にしていることが分かります。


スマホで5分!運用の裏側と公平性を保つ工夫

いくら良い制度でも、運用が面倒では続きません。この会社では、以下のような工夫でスムーズな運用を実現しています。

  • スマホで簡単入力: ドライバーが待機時間などを使って、いつでもどこでも評価を入力できるように、スマートフォンに完全対応。
  • 自動集計システム: 入力されたデータは自動で集計・ランキング化。事務員の負担をなくし、人為的なミスも防ぎます。
  • 匿名性の確保: 誰が誰をどう評価したかは、経営層しか分からない仕組みに。忖度なく、正直な評価ができる環境を担保しています。
  • チーム分けと偏差値: 公平性を保つため、関わりの深いメンバーでチーム分けを実施。さらに、チームごとの評価の甘辛を調整するために「偏差値」を算出し、全体での公平なランキングを出しています。

そして、このランキング上位者には賞金も支給!頑張りがきちんと報われることで、社員のモチベーションアップにも繋がっています。


導入後の驚くべき変化(After)

最初は「評価されるなんて嫌だ」「俺のやり方でやってきたのに」といった反発もあったそうですが、制度が浸透するにつれて、職場には劇的な変化が訪れました。

  • コミュニケーションの活性化: 若手がベテランに気軽に質問できるように。ベテランも積極的に技術や注意点を教える文化が生まれました。
  • 離職率の劇的な低下: 職場の居心地が良くなり、新人が定着。会社全体の技術レベルが底上げされました。
  • 助け合いの精神: 自分の仕事が終われば他の人を手伝うのが当たり前に。チーム全体の効率が格段にアップしました。
  • 事故の減少: 事前の情報共有が密になり、「あそこは危ないよ」といった声かけが増え、無駄な失敗や事故が減りました。

今では、仕事が終わってもみんなでワイワイ話していたり、ご飯に行ったり、本当に仲が良いですよ。こういう仕組みがあったからこそ、今の良い雰囲気が作られたんだと思います。(若手ドライバー談)

まとめ

運送会社の働き方改革として導入された「360度評価制度」。

それは単なる評価ツールではなく、「会社がどんな人材を大切にしているか」というメッセージそのものでした。

売上だけでなく、挨拶や感謝、助け合いといった日々の行動を正当に評価することで、個人の意識が変わり、それが職場全体の文化を変え、最終的には離職率の低下や業績向上に繋がっています。

あなたの会社でも、見えにくい「貢献」を「見える化」する仕組みを取り入れてみてはいかがでしょうか。